始まって3ヶ月近くになるロシアとウクライナの戦争は、
ロシア側の失態とウクライナの大健闘によって、まだまだ続くことになりそうです。
しかしここでロシア軍が世界的に貴重なある施設を破壊した、
というニュースが入ってきました。
ハリコフにある植物種子貯蔵庫がロシア軍の攻撃で焼失。ウクライナ唯一の種子貯蔵庫であり、世界中から集めた16万種類の種子が保管されていた。https://t.co/2jkSHSSvM3 pic.twitter.com/fSSq9dInTu
— Ховтолив-хуёвтолив (@SeloEniseiskoe) 2022年5月17日
「種子貯蔵庫」とは、植物の多様性保護のために、
様々な植物の種子を保管している施設のことです。
中には、今では絶滅してしまっている植物の種子なども
保管されていたようです。
そうした文化的遺産を破壊してしまった、というのは
まさにロシア軍の「蛮行」以外の何物でも無いでしょう。
美術品や人類の文化的遺産を破壊するのと、なんら代わりはありません。
ところで実はこの「種子貯蔵庫」ですが、
そもそもこうした施設を作ろうと考えだしたのは、
実はロシア人の科学者、ニコライ・ヴァヴィロフだったのです。
特にヴァヴィロフはメンデル遺伝学を再発見して当時代に合うように再構築したウィリアム・ベイトソンの流れをくむ当代一流の遺伝生物学者で、世界中を回って穀物の植生を調査し、植生範囲とその系列・分類を明確にするのに加え穀物の種子の重要性を理解し、世界初(のはず)の種子保存センターを作るなど、いわゆる「緑の革命」の基礎を作った偉大な植物学者・遺伝学者でした。
ロシア人が作った物をロシア人が破壊する、というのは
本当に呆れるしかありません。
ちなみにこの種子貯蔵庫には、第二次大戦時にナチスドイツに襲われたものの、
ナチス側がその価値を認め破壊しなかった、という話もあるようです。
ここ、二次大戦中にナチスドイツの侵略を受けたものの、収蔵物の価値を尊重して破壊されなかった場所です。
— 三崎律日@『奇書の世界史2』発売中! (@i_kaseki) 2022年5月18日
「ナチズムへの対抗」を謳う戦争としてはあまりにも皮肉な結末。 https://t.co/GZ3jChwBny
本当に皮肉以外の何物でもありません。
こうした蛮行がこれ以上続かないよう、
一日も早く戦争が終わってほしいものです。